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小林 佐和子

KOBAYASHI Sawako

工芸(陶芸)研究領域

審査委員
● 豊福 誠(工芸科教授)、○ 片山 まび(芸術学科准教授)、◎ 島田 文雄(工芸科教授)、藤原 信幸(工芸科准教授)


1984年 神奈川県藤沢市生まれ
2009年 東京藝術大学美術学部工芸科陶芸専攻卒業
2011年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程陶芸専攻修了


着色磁器で表現するマジックレアリズムの世界

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本論文は、研究素材である着色磁器を、マジックリアリズムという精神的手段を独自に解釈し、その存在をより明確にしていくものである。
着色磁器とは、磁土に酸化金属などの高温でも発色する顔料を混ぜ込み、焼成した磁器である。私は東京藝術大学及び東京藝術大学大学院陶芸研究室で、着色磁器の研究に取り組んできた。私の着色磁器の研究はヴェネツィアン・ガラスのミッレフィオリを陶器で展開したいという思いから始まった。ミッレフィオリを陶器に置き換えたものを練り込み技法及び彩層技法と言う。この着色磁器にマジックリアリズムという現実と非現実を混淆させる思考を取り入れて立体作品を制作する。本論文ではその思考の発生源と過程と着色磁器の説明および具体的な制作工程を記す。
私が表現するマジックリアリズムとは、現実と非現実の混淆を狙うものである。生来、異質なものが混淆されて調和が保たれているものに興味を持つ性がある。それは対局にあるものでも隣り合うものでも良いのであるが、二つの世界感が出会った時に相乗効果で起こる化学変化のような驚きと魅力に感動することが多い。何かと何かが混ざりあって、世界の経済・文化・人類は発展してきた。異質が出会うことは人間の成長や発展という点において、これほどスピードを早めるものは無い。私も異質の混淆を具現化することによって、自らの精神的な成長を求めていきたい。そう思い、本論文の執筆に取りかかった。内面的な成長に、外からの刺激は必要不可欠なものであり、私自身、私以外のすべてのものの存在に助けられている。単体は単体で絶対的に存在しているものであり、単体の持つ美しさは普遍的なものであるが、見慣れているものの一部に異質が混淆する面白みを表現することは、藝術作品ならではの価値を増すものだと考える。そして、その行為は私自身にはとても自然なことである。
本論文は、私が表現したいマジックリアリズムの世界と着色磁器に主題を置き論考した。結論では、第一章から第三章までのまとめと、全体としての結論、自身の今後の展望について述べる。
第一章ではマジックリアリズムの説明と私が表現したいマジックリアリズムの世界について論じた。一言にマジックリアリズムと言っても様々な表現の可能性があるため、本論文で触れた具体例はほんの一部に過ぎないが、自身の作品の具体例を挙げて論じることで自らの好む傾向がより明確になったと感じる。自身の好むマジックリアリズムの手段とは、現実的な描写と非現実的な形態との混淆である。第二節で論考した擬人化はその代表例である。何かと何かの中間点を狙うような表現ではなく、それぞれの特徴をそのまま残した状態での混淆が、私の表現したいマジックリアリズムであると理解した。
第二章の着色磁器について論じた部分では、自身の原点とも言える着色磁器を表現する発想の始まりと、その技法について述べた。第二節で論じた練込技法と、第三節で述べた彩層技法は、それぞれに思い入れの深い技法であり、技法の良い面と困難な面の特徴については今後の制作に活かすことができると考える。第四節で述べた着色磁器の造形的可能性は、現時点で私が考えられるものをすべて述べたが、今後の制作手段によっては、新しい造形的可能性が出てくることが期待できる。
第三章では、博士審査展の作品の製作意図と制作工程について記した。自身の作品の制作工程を写真をふまえて段階的に記す作業は、私自身初めて行った行為である。こうして制作工程を記すことで、制作の無駄な部分や変更するべき部分が浮き彫りになった。制作工程を文章としてまとめる作業は、自身の問題点を洗い直す意味で、とても有効であると感じた。