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櫻井 稔

SAKURAI Minoru

デザイン研究領域

審査委員
● 箕浦 昇一(デザイン科教授)、○ 藤崎 圭一郎(デザイン科准教授)、◎ 松下 計(デザイン科准教授)、江渡 浩一郎(独立行政法人産業総合技術研究所)


1982年 東京に生まれる
2009年 東京藝術大学美術学部デザイン科卒業
2011年 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了

主な受賞
2007年 独立行政法人情報処理推進機構( IPA )、未踏ソフトウェア創造事業ユース上期採択「SequentialGraphics」
2008年 テレビ東京、ワールドビジネスサテライト「トレたま」出演
2008年 独立行政法人情報処理推進機構、スーパークリエイター認定
2008年 日本ソフトウェア科学会、Workshop on Interactive Systems and Software [ WISS ] 最優秀発表賞
2008年 独立行政法人日本学生支援機構、優秀学生顕彰事業学術分野にて優秀賞受賞
2009年 テレビ静岡知球人出演
2011年 情報処理学会、エンターテイメントコンピューティング21学生発表賞受賞
2012年 デザインシンポジウム2012採録
2012年 グッドデザイン賞受賞(地球マテリアルブック)


AirStroke

3Dペイントソフトウェア AirStroke

3Dペイントソフトウェア "AirStroke"

1960年代、コンピューターの組版システムが誕生し、その後デスクトップパブリッシング(DTP)が急速に世界に普及したことで、コンピューターはデザインに欠かせない存在となった。CMや映画などの映像では編集はもちろんのこと、ゼロから3DCGで製作が行われるなど、ほぼ全てのコンテンツはその工程でコンピューターが使用されている。我々の生活環境には様々な形でデジタル技術が普及し、多くの人は自動車や自動改札機など、毎日何かしらの形でコンピューターに関わりながら生活をしている。それに伴い、消費されるコンテンツも書籍やポスターなどの物理的な媒体からホームページや電子書籍といったデジタル媒体へと姿を変え、デザイナーにとってコンピューターの活用は避けることのできない道となった。

2009年には日本におけるコンピューターの普及率は87.2%にまで達し、インターネットの普及率も2010年の時点で90%を超えた。スマートフォンの普及後は、コンピューターを持たない人であっても、ネットワークに接続された端末を使い、いつでも気軽にデジタルコンテンツを楽しめるようになった。その中で、これまで主にコンテンツを作るための道具として扱われてきたコンピューターは、インターネットを介してコンテンツを配信したり、閲覧したりするためのプラットフォームとしても扱われるようになってきている。

インターネットに接続されたコンピューターやスマートフォンの間では、毎日大量のコンテンツが消費されているが、それらは画像や音楽、ゲームに関わらず0と1の並びによって表現され、コンピューターというメディアの間を飛び交っている。そのため、ここで扱われる0と1はコンピューターの世界ですべてを構成するための要素であり、コンテンツの種類に関係なく、メディアの中で扱われる"素材"と捉えることができる。このメディアを有効に活用するために、デザイナーの提案にはテクノロジーを活用したものが増え、プロジェクトチームにはエンジニアの参加が目立つようになった。しかしながら、デザイナーがエンジニアリングを深く理解している例は少なく、提案が技術的な面で無理を強いることで最終的にコンセプトがブレたり、エンジニアとの情報共有不足により当初想定していたものとは違うものが生まれるといった状況をよく目にする。これらの問題は、企画立案を行う段階で技術的に何が出来て何が出来ないのかを思考に織り込まず、出来上がった提案を具体的にどのような手段で実現するのかをエンジニア任せにしてしまうために起きている事が多い。

現実世界で自身の持つイメージを物体として具現化する行程を考えた場合、スケッチやモック制作など様々な方法が存在する。これらは、自分自身がイメージをより具体的にしたり、イメージを齟齬なくエンジニアに発注するのに重要な役割を果たす。物理的にモノを作る場合、デザイナー自身の手で直接素材に触れ、素材の特性を肌で感じながらアイデアを練る。テクノロジーにおいても同様に特性が存在する。デザイナーは今までと同様に直接素材を触り、アイデアを練る必要があるだろう。紙や粘土などの素材に触れ、加工するためには多くの場合それに適した道具が必要となる。また、より素材の特性を感覚として強く感じるためには道具を身体の一部として意識して自在に扱う必要がある。テクノロジーを理解し活用するにあたって、この身体化についてより深く考える必要があるだろう。

本研究では、3次元ペイントソフトウェア"AirStroke"の開発を行い、それ用いて描画表現を行う。ソフトウェアの開発と描画表現を交互に繰り返し行うことで、0と1という素材の身体化を目指し、デザイナー自身がプログラミング言語を深く習得した上で試行錯誤を繰り返すことの重要性を示したい。