審査委員
● 原 真一(彫刻科准教授)、○ 布施 英利(芸術学科准教授)、◎ 深井 隆(彫刻科教授)、
林 武史(彫刻科教授)、森淳一(彫刻科准教授)
1980年 青森県生まれ、静岡県育ち
2009年 東京芸術大学美術学部彫刻科卒業
2012年 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了
主な受賞
2009年 サロン・ド・プランタン賞
2009年 荒川区長賞
何気なく見ているものからそれ以上のものが感じられるとき、言葉では表しにくいもの、気になるもの、引っかかるものがある。そしてそれらの違和に気付いたとき「ドキドキ」や「ワクワク」といった、言葉ではそれ以上説明しづらいけれども、気分を高揚させるなにかがある。それは不確かな存在の「気配」である。
私は、デカルコマニーの技法により、左右対称の像、偶然から生まれる像から形を探り、立体へと発展させることを試みてきた。その絵具のしみを見ていると何か見えてきそうで、その実体のわからないものに「ワクワク」し執着心を抱いた。何が描かれているでもない曖昧な模様(平面)を辿り、徐々にはっきりとした形(立体)としてただ何となく存在させてみようというのが最初の目的であった。見方により様々な像が見えてくる、デカルコマニーを作品の構想に取り入れ、また、「ずれ」を含んだ左右対称の像が現れるデカルコマニーに、双子として生まれた自身の投影の可能性を見出し、視覚的要素を介して、美術と自身の距離感、見える存在、見えない存在への期待と違和の可能性について研究する。
≪GIRLS≫2011年
≪ALICE≫2012年
≪SWAN≫2012年
主に大理石を彫刻の素材として好んで扱っているが、その理由としてはやはり、大理石の“そこに在る存在感”である。しかしそれだけではなく“見えない存在感”、つまり何か期待できそうな、内から発する力を感じられるところが大理石の魅力である。
簡単には彫れない石だからこそ、違和感が生じ、向き合う時間ができる。その度に、可視イメージを重ね合わせる。可視イメージを重ね合わせていくうちに不確かな存在を感じられるようなものになると良いと思う。その作品がどんな形になるのか、最後までわからない。イメージは流動的に変化し、それに伴い彫刻も変化していくのである。そこに在るもの(作品)に不確かな存在が静かに浮遊するような雰囲気を表現できたら良いと思う。
≪LILY≫2013年