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中西 紗和

NAKANISHI Sawa

彫刻研究領域

審査委員
● 原 真一(彫刻科准教授)、○ 布施 英利(芸術学科准教授)、◎ 林 武史(彫刻科教授)、深井 隆(彫刻科教授)、森 淳一(彫刻科准教授)


1985年 東京生まれ
2009年 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2012年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了

主な受賞
2009年 三菱地所賞
2012年 東京藝術大学大学美術館買上賞


ブロンズ鋳造彫刻における喪失と存在

―「彫刻は墓である」という考察―

博士展会場風景

博士展会場風景

「inward」作品部分(ワックス、ブロンズ) 「inner」作品部分(ミクストメディア)

左 : 「inward」作品部分(ワックス、ブロンズ) / 右 : 「inner」作品部分(ミクストメディア)

「uh」作品部分(ブロンズ、ワックス)

「uh」作品部分(ブロンズ、ワックス)

彫刻をするということは、ときに空洞をつくることでもあります。
どういうことかというと、最終的にカタチとなった彫刻、それ以外の空間をまず物質として存在させるということです。わたしは現在ロストワックス鋳造法という手法を用い彫刻を制作していますが、その行程の中に「原型消失」という現象が必ず起こります。ブロンズ彫刻になる前にワックスでつくられた原型作品は一度この世から完全に無くなるのです。
私はこの現象に強く惹かれ、「物質」が「消失」すること=「喪失」を物質を生み出す彫刻家としてどのように解釈してゆくのかを課題として制作してきました。そのなかで、消失と再生を繰り返すロストワックス鋳造法とは何かの儀式であること、それが人間の葬送の儀式であり彫刻鑑賞とは現代の葬送儀式の追体験と言えるのではないだろうかと考えるようになったのです。
彫刻というものは、その物理的な存在それよりもそれを取り巻く空間、人間に残る記憶といった物理的には目に見えない「痕跡」のことも指示しています。
最終的に数千年後も残る素材、重みある触れられる物質になることの背景に喪失といった見えない事実が起こっていることに着目することは、ブロンズ鋳造彫刻を分析するひとつの入り口であると私は考えているのです。