審査委員
● 齋藤 芽生(絵画科准教授)、○ 佐藤 道信(芸術学科教授)、◎ 小山 穂太郎(絵画科教授)、小林 正人(絵画科准教授)、O JUN(絵画科准教授)
左 : 木 wood / 造花、紙筒、キャスター、その他 右 : 山 mountain / 三脚、サテン布、キャスター、その他
この論文は自作と風景、また風景画との関わりについて論述したものである。タイトルに使われている継母とは自作においてイメージソースとなる九州の原風景それそのものの再現を目指しているのではない。交換可能な素材やイメージ、または抽象的、観念的になぞられた形態や色彩によって再構築されたものであることを述べている。それは作者が原風景というものを、それ自体が変化しとめどないものだと考えているからである。またタイトルにある大地とは原風景のある、またはあった土地をふるさと「母なる大地」とすると、たとえそこが失われたりそこから離れたとしても、他の土地の風景から原点となる風景で感じたような感覚が得られたさい、その土地を「継母なる大地」と呼び愛でられるのではないかと考えた。しかし最終的に得た結論は、作者の感じる上で戦後の祖母、母、私の三世代にわたって築き上げたものは非常にもろく、母なる大地は作者の体験の中にあるものであり実際にははじめからどこにも無かったのではないかということであった。創作の意味は風景—自然と人工物、そして人間の交流した際の感受性を自分自身が守り、「継母なる大地」として描き直す役目をしているということだ。