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山田 彩加

YAMADA Ayaka

油画(版画)研究領域

審査委員
● 東谷武美(油画、版画第一研究室教授)、○ 佐藤直樹(芸術学科准教授)、◎ 三井田盛一郎(油画、版画第二研究室准教授)、坂田哲也(油画、油画第六研究室教授


1985年 愛媛県生まれ
2008年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2010年 東京藝術大学大学院修士課程美術研究科美術専攻版画研究領域修了
2011-2012年 L'École nationale supérieure des beaux-arts de Paris 交換留学
2013年 東京藝術大学大学院博士課程美術研究科美術専攻版画研究領域在籍

主な受賞
2008年 東京芸術大学卒業・修了作品展 買上賞
2008年 東京芸術大学 O氏記念賞
2007年 全国大学版画展 町田国際版画美術館 修蔵賞
2010年 日本版画協会第78回版画展 山口源新人賞
2013年 日本版画協会第81回版画展 準会員FY賞


命の繋がり

-芸術的観点から探究する生命の本質-

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生命の変容と融合-0への回帰-(一部)


自身の創作コンセプトは、「命の繋がり」である。
「命の繋がり」とは、宇宙の誕生から過去・現在・未来を通じて、全ての時間と空間の中で生じる命の連鎖である。宇宙の誕生から現代までの約数百億年の間に、万物の基となる物質は、様々な惑星(太陽系・地球等)を形成した。地球上で誕生した原始生物が、進化と共に絶滅と生成を繰り返し、種の多様性を得て過去・現在・未来を通じて共存している。命の連鎖とは、森羅万象に共通する粒子から細胞が誕生し、多種多様な生物へと進化を経る中で、生と死を通じて生物から再び粒子(物質の最小単位)へと還元される一連の過程であり、更にその生成と分解を全ての生物が同様に繰り返すことである。その一連の中で、生物は時代毎に子孫を残し、自らの遺伝情報の伝達と種の保存を本能的に行っている。生物間の異種・同種が互いに連関し共存する上で、生存維持に必要な環境や活動が成り立っているのである。
「命の繋がり」を創作概念として確立したのは、生物間における形態の類似性(毛細血管と植物の根等の類似性)に感銘を受けたからであった。現在の生物間に見られる形態や性質の類似性(恒常性・自己複製能力・エネルギーの変換を行う等)は、全ての生命がある根源的な共通の祖先(原始生物)から多種多様に進化した存在であるということを示唆している。原始生物を構成する物質は極めて小さな粒子であり、これが「物質的な命の本質」であると考える。この粒子は森羅万象を構成し、生物の生と死を通して過去から未来に掛けて輪のような一連の繋がり、「命の連鎖」を形成していると考える。
「命の連鎖」の中で誕生した多種多様な生物の中で、人類は他の生物より脳が進化し、約数千年の間に生命活動に加えて極めて理知的な活動を営んできた。進化と共に知能や心、精神の働きは複雑化し、それらが蓄積された固有の存在が全て無に帰するという「死」の存在について、人類が考察し始めたことは必然であった。「死後肉体は消滅する。では、心や精神、我々の存在と行方はどうなるのか」という極めて不明瞭な問題を浮き彫りにし、また未解決のまま、未だ問い続けているのである。
以上から本論文では、物質的な存在の本質である細やかな粒子が、生命の死後自然へと還元され、循環していくことに対して、形而上的な存在の本質はどのような状態を持って変化し、或いは存在するのかについて、芸術的観点から考察する。
制作においては、まず形態の類似性から「命の繋がり」を表現するため、画面上で生物間の生体を変容させ、融合する描写を試みた。加えて、多様な生命の繋がりを具現化した紐状の描写を交差し、或いは網目状に集積させ、生命の誕生と死後に見られる周囲との物質的、或いは精神的な繋がりの様子を表現した。自身の制作においては、物質的な構想(実存的・写実的なモチーフ)と形而上的な構想(幻想的・抽象的なモチーフ)が関わり合う上で、一つの作品が成立しているのである。


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生命の変容と融合-0への回帰-(一部)


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生命の変容と融合-0への回帰-(一部)


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memento mori