変身の自画像 —クリーチャーが私をつくる—
林 千歩
本論は、これまで自分でも無自覚に制作してきた作品の隠されたコンセプトや思考回路を整理し、制作の方向性をより明瞭かつ緻密にする目的で論述した。タイトルにあるように、作品の全体像を「変身」というキーワードでくくり、様々な主体に転移しうる「自画像」を描写しようと試みた上、作品とその前提となっている私の感受性や世界観などを踏まえ、「クリーチャーが私をつくる」という副題を添えた。
構成について、「はじめに」ではパーソナリティー紹介と私がいかなる作品を制作しているのかについて論じ、また本論のタイトル(題名)である「変身の自画像——クリーチャーが私をつくる——」について、変身やクリーチャー・自画像などのキーワードを解説した。作品の傾向を説明することにより、私が如何なる人物でどのような作品を作っているのか、初見の方にも理解してもらえるようにつとめた。
第一章 「解剖!クリーチャー」では、自己の映像作品に登場するクリーチャーを種類ごと「虫、エイリアン、(魚類)、感情、人間、アーティファクト(人工遺物)、動物、植物、神(超自然・精霊・妖精を含む)」に分類し、それらがどのように体系付けられているのかを、『生命の樹』のイメージを参考にして表した。その後、なぜ「虫と神」が対極に位置し同等のものとして自己の作品内で扱われるのか、語られるのかという点について異なる点と共通点、そして「虫から神へ」のつながりについて考察し、「エジプト先輩(エジプト文明)」と色相・色相環のビジュアルイメージとの関係について論述した。また変身そのものについてイメージを掘り下げるため、一般的な変身についてと、「変身願望」が発生する動機について論述するため、制作の原点として幼少期に影響を受けた作品である『らんま1/2』や『美少女戦士セーラームーン』、『ポケットモンスター』、『たまごっち』などの「変身」するキャラクターについても触れた。また古典的な変身について『みにくいアヒルの子』と『シンデレラ』などを例に挙げ、変身に関わるイメージについて述べた。さらにカフカ『変身』と自作品の共通点と異なる点を考察し、自己作品内でいかにして変身が行われているかについて「変身の素材」を用いて論述した。
第二章 「図解・クリーチャー」では、図鑑の形式によって自己作品に登場するクリーチャーの画像を交えながら、過去作から最新作までの作品を大まかな時系列順(制作順)におい、クリーチャーの進化と変容ついて論じた。その後、前章にて種類ごとに分類したそれぞれのクリーチャーがどのような性質を持ち、作品内でどのような役割を果たしているのかを客観的に可視化することで、クリーチャー自身の役目をよりわかりやすく分析・解説し、更に日常的な事物を例示し考察することによって、自作品の世界観、美学について述べた。
第三章 「クリーチャー自身による解説」では、これまでの知見をもとに論文全体の総論である「なぜ変身するのか」という制作の本質である動機や衝動性について掘り下げるため、大学学部一年のときに「自分らしさ」とは何かを求め、自らが「変身」し登場する映像作品を制作したことがこれまでの制作へと繋げる動機となっている経緯を示した。また「美と醜」や「老いと若い」、「男性と女性」など生物学的にも極めて交換が難しいと考えられる対極にあるもの同士を、イコール(=)で繋げる、つまり不可能を可能にできるのが「変身」の効果であり、またこの変身願望は「作り手」と「鑑賞者」との間に生まれる「何か」を求め、何かを演じ、自己のなかに取り込むことで、自己の周りの世界を認識し社会へ接続する手段として、自らの身体を素材に様々なものへと「変身」をしていることが明らかとなった。さらに、より客観的な視点を取り入れるために変身をテーマにしている他の作家(マシューバーニー、シンディーシャーマン、森村泰昌)と比較し、自身の作品とのる類似性、および自己の作品の独自性について更に考察を深め、結論部を記述する。これまで不明確だった作品の制作意図を分析することで、自分の作品をプレゼンテーションし、鑑賞者への開かれた場を提供することにつなげる狙いがある。
「おわりに」では、結論として、私が自作品の評価を確立するためにめざすこと、社会や他人に対して提案したい内容、今後の展望について述べた
構成について、「はじめに」ではパーソナリティー紹介と私がいかなる作品を制作しているのかについて論じ、また本論のタイトル(題名)である「変身の自画像——クリーチャーが私をつくる——」について、変身やクリーチャー・自画像などのキーワードを解説した。作品の傾向を説明することにより、私が如何なる人物でどのような作品を作っているのか、初見の方にも理解してもらえるようにつとめた。
第一章 「解剖!クリーチャー」では、自己の映像作品に登場するクリーチャーを種類ごと「虫、エイリアン、(魚類)、感情、人間、アーティファクト(人工遺物)、動物、植物、神(超自然・精霊・妖精を含む)」に分類し、それらがどのように体系付けられているのかを、『生命の樹』のイメージを参考にして表した。その後、なぜ「虫と神」が対極に位置し同等のものとして自己の作品内で扱われるのか、語られるのかという点について異なる点と共通点、そして「虫から神へ」のつながりについて考察し、「エジプト先輩(エジプト文明)」と色相・色相環のビジュアルイメージとの関係について論述した。また変身そのものについてイメージを掘り下げるため、一般的な変身についてと、「変身願望」が発生する動機について論述するため、制作の原点として幼少期に影響を受けた作品である『らんま1/2』や『美少女戦士セーラームーン』、『ポケットモンスター』、『たまごっち』などの「変身」するキャラクターについても触れた。また古典的な変身について『みにくいアヒルの子』と『シンデレラ』などを例に挙げ、変身に関わるイメージについて述べた。さらにカフカ『変身』と自作品の共通点と異なる点を考察し、自己作品内でいかにして変身が行われているかについて「変身の素材」を用いて論述した。
第二章 「図解・クリーチャー」では、図鑑の形式によって自己作品に登場するクリーチャーの画像を交えながら、過去作から最新作までの作品を大まかな時系列順(制作順)におい、クリーチャーの進化と変容ついて論じた。その後、前章にて種類ごとに分類したそれぞれのクリーチャーがどのような性質を持ち、作品内でどのような役割を果たしているのかを客観的に可視化することで、クリーチャー自身の役目をよりわかりやすく分析・解説し、更に日常的な事物を例示し考察することによって、自作品の世界観、美学について述べた。
第三章 「クリーチャー自身による解説」では、これまでの知見をもとに論文全体の総論である「なぜ変身するのか」という制作の本質である動機や衝動性について掘り下げるため、大学学部一年のときに「自分らしさ」とは何かを求め、自らが「変身」し登場する映像作品を制作したことがこれまでの制作へと繋げる動機となっている経緯を示した。また「美と醜」や「老いと若い」、「男性と女性」など生物学的にも極めて交換が難しいと考えられる対極にあるもの同士を、イコール(=)で繋げる、つまり不可能を可能にできるのが「変身」の効果であり、またこの変身願望は「作り手」と「鑑賞者」との間に生まれる「何か」を求め、何かを演じ、自己のなかに取り込むことで、自己の周りの世界を認識し社会へ接続する手段として、自らの身体を素材に様々なものへと「変身」をしていることが明らかとなった。さらに、より客観的な視点を取り入れるために変身をテーマにしている他の作家(マシューバーニー、シンディーシャーマン、森村泰昌)と比較し、自身の作品とのる類似性、および自己の作品の独自性について更に考察を深め、結論部を記述する。これまで不明確だった作品の制作意図を分析することで、自分の作品をプレゼンテーションし、鑑賞者への開かれた場を提供することにつなげる狙いがある。
「おわりに」では、結論として、私が自作品の評価を確立するためにめざすこと、社会や他人に対して提案したい内容、今後の展望について述べた
- 審査委員
- 保科豊巳 布施英利 小山穂太郎 小林正人 齋藤芽生 住友文彦
変身の自画像 —クリーチャーが私をつくる—
Oil Painting