本作では、奄美大島における首のない豚の幽霊話を基に、埋め立てられた土地のフォークロアを掘り起こすことを試みた。スクリーンに映し出されている土地は、東京の中央防波堤埋立地、北海道の二風谷ダム、そして奄美大島の宇宿貝塚と、一見すると何の関係もない三つの土地をモチーフとしている。しかし、貝塚という過去の痕跡を掘り起こした場所の近くに出没し、過去の記憶を現在へと伝える首のない豚の幽霊を介して、過去の記憶が「埋め立てられた」二つの土地(中央防波堤埋立地・二風谷ダム)が繋がりを持ち始める。さらにこの幽霊の出没は、フォークロアが不可視化された土地で、埋め立てられた記憶にそれぞれが目を凝らし、耳を澄ますことを促している。 また映像に付随する音は、これらのフィールドで録音した環境音に、言葉を強調するエフェクトを施すことで作成されている。その結果、風の音や葉が擦れる音が、話し声のリズムに変換されている。