研究科長挨拶

大学院美術研究科長 日比野克彦

 東京藝術大学大学院美術研究科の博士学位審査には、学科系研究領域の「論文」によるものと、実技系研究領域の「作品と論文」によるものという二つの形式があります。本学のように実技系の学生が多数を占める大学院においては、その審査方法について、これまで様々な見地から検討がなされてきました。 
実技作品における感性・技巧・表現等の質の追求は、本学の教育、研究の中心を成すものであります。実技系の博士後期課程においては、国内はもちろん国際的な見地においても一流の創作性と質の高い作品の追求をしなければなりません。それと同時に、客観的考察や論理的思考の追求も必要になってきます。これら作品制作と論文執筆の相乗効果により、博士学位取得の目的が果たされることができます。
本学の美術研究科では、学位審査の対象となる作品展示と論文発表を一つの会場で開催し、「博士審査展」として一般に公開してまいりました。今年度はさらに充実した博士後期課程作品発表展が開催されました。
また、平成26年度から博士審査展図録はweb上で公開されることになりました。こちらの図録には、展示作品の写真と研究論文の要旨を併せて掲載しております。これにより、各学生の研究の全体像を皆様にご理解いただけることはもとより、アーカイブとしての役割をも果たすことになります。
本学における博士学位取得は、まさに多くの方々のご理解と、教育・研究面でのご指導の賜物であります。皆様方に尽くせぬ感謝を申し上げます。本課程修了後、学生たちが芸術家、研究者として益々活躍していくことを期待するとともに、芸術分野での博士号の意義と社会的な価値が、一層定着していくことを願って止みません。また今回の博士審査展にご支援、ご協賛をいただいた団体、個人の皆様に心より厚くお礼申し上げます。

大学院美術研究科長
日比野 克彦