Oil Painting

絵画の表面と奥―存在のありか―

佐々木 美穂子

本論文は、絵画を”表面”と”奥”という二つの側面に分け、絵画の存在のありかを考察したものである。絵画の直接触れることができる部分を、絵画の”表面”とし、絵画の”奥”とは、描かれた絵画の内部空間を指す。
 「はじめに」では、本論文を書くに至った背景を述べた。”表面”と”奥”が、ともに存在しているという、違和感を感じるようになったきっかけをまとめている。
  第1章では、絵画の直接触れることができる部分である”表面”について考察する。制作時には直接モチーフに触れている感覚があるが、実際は画面の”表面”を触れているにすぎない。この触覚を同時に感じることができるよう、モチーフを肌とし、絵画を皮膜として捉えることはできないかという試みについて述べた。皮膜を手がかりとし、”表面”と”奥”を同時に感じることができれば、絵画を描く時の違和感を解消できるのだが、被膜についての考察をすすめるうちに、”表面”の先に皮膜があり、さらにその先に”奥”があるというような、単純な構造では無いことがわかった。
 第2章では、”奥”から絵画について考察した。箱を見て中身を想像することと、絵画の”表面”を見て”奥”の空間を想像することの類似点を挙げ、”奥”は見る人の脳内にあるとした。さらに、絵画の皮膜を網膜であるとすることで、”表面”と”奥”の関係を整合できないかと考えた。そして、普段の生活のなかで、絵画の”奥”に身を置いているような経験として、剣道で面を打たれるときと、自分に化粧をすることを挙げ、絵画空間の作られ方を考察した。絵画の”奥”を表す技法としての遠近法等についても述べた。
 第3章では、提出作品を解説し、絵画の共有のしかたと、絵画の存在のありかをさぐった。「おわりに」では、”表面”と”奥”の関係をまとめ、絵画の存在のありかについて総括した。
審査委員
OJUN 佐藤道信 三井田盛一郎 秋本貴透

佐々木 美穂子

絵画の表面と奥―存在のありか―


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