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[疂彩](ジョウサイ)技法による立体彩絵の世界 彩絵陶磁器加飾技法における立体絵画表現と技術応用

王 雪阳

  本論文において論述する主な内容は、陶芸分野の伝統彩絵加飾技法を進化させ、オリジナルの陶磁器装飾技法の完成過程および技法応用についてである。更に、その装飾形式と材料技術を総合的かつ双方向的に研究し、私個人の創作経験とも融合することにめさして、創作の途中にある問題点を解決しつつ、具体的な分析と研究を行う。「疂彩」技法は私のオリジナル技法であり、現在の作品制作の中に主に使用している。この技法は色彩があざやかで豊富であり、細かい絵画表現ができるという技術上の特徴を備えている。さらに畳彩技法は高温焼成によって完成するため、通常の彩絵陶磁と比較して、飲食に供する陶磁器製品に利用した場合、より安全性が高い。他にも色の階調が明確で、顔料自体の量感を利用して立体感がある絵画表現を実現できる視覚上の特徴もある。「疂彩」技法の活用は伝統的な陶磁器の彩絵技術の表現力の幅を広げ、今までにない新しい視覚的刺激を与えることが可能である。

 第一章は本論分成り立てる重要な基礎になる「立体彩絵」という単語について。最初にこの概念を思い付く段階から最後にこの概念を創作の中で実現できる段階まで詳しく説明している。
 第二章は「畳彩」の定義を行う。「疂彩」その名の由来であるが、いわゆる「疂」とは「重畳」を意味する。自身で調合した顔料を比率に従って、素地と同成分の磁土の粉末と釉薬の層と同成分の釉薬に加え、粘性があり、盛り上がった特殊な顔料を作る。この顔料の底色は、濃色、淡色の順に重なり合って輪郭線の中に入り込むという描画技法の一つである。この技法により絵付けされた図案の表面は重層回数の違いに従って、異なる凹凸感を形成する。完成後の作品の絵柄は、浮彫と同様の階層感を表す。この畳彩に使用する顔料は一層塗りの時に、約0.5㎜の厚さがあることが特徴で、何層か塗ることで2㎜以上の厚さになって浮彫並みの立体効果を出すことができます。この顔料の活用方法は、日本画の「彫塗り」技法と同じで、平面の画面に立体効果が出せる上に、器全体の形状と上絵が互いに呼応し、幾重にも広がるような表現の豊かさと、趣が溢れるように満ちている視覚的効果を与えてくれます。
 第三章は私は今回の卒業制作を通して、陶芸に携わって以来積み重ねて来た技術と思想の変革により得た経験を観衆の皆の前に展示し、私の拙作を高覧頂くと同時に私の芸術思想を体感して頂ければと考えている。

博士卒業制作説明
 タイトル:  「世界は人により始まり、人により終わる」。
卒業制作の創作背景:
 この世界の本来の状態を言えば、人類はそもそも自然の一部分の存在でしかないのであるが、時が進む中、いつからかこの世界は知恵が最も発達した人類に支配されるようになり、さらにその知恵ゆえに少しずつ破滅の道を進みつつある。この人間を創造した自然の力を人類は神などに当て嵌めているが、同時に自身を生命の長と信じる人類は神が自分達と同様な外見が存在だと考え、あるいは神は自分の姿形を真似て人類を作ったという考え方を昔から持っている。私の理解において人類がこのように考えるようになったのは、この世界かは自分達によって作られたと言う思想があったからではないかと考えている。しかしこれは、真実であろうか。人間は自覚なしに何億年という時の中で蓄えて来た資源を短い時間内で使い果たそうとしており、さらに他の生物や自然の領域に侵入することも大変多い。もしこのような状況が続いていくなら、自然の全てと人類の消失という運命を避けることは極めて困難となるだろう。このような言い方は使い古された環境保護の常套句かもしれないが、現在の世界が直面している深刻さを表せればと思い、自分の芸術表現と陶磁器という特別な素材を通して問題を提起し、一種独特な視覚体験によって、日常に存在しながらも実感し難い事象を観衆に見せられることを望んでいる。

作品の構成
 作品構成についてまとめてみる。現在の科学及び思想哲学において、世界は「天(気・風)」・「地(土)」・「水」・「陽(火)」四大元素から構成されていると考えられている。そこで、私の今回の作品はこの四大元素の要素を用い、日本画と陶磁器を1組として、これを4セット制作してテーマを表現することとした。これは陶磁器を通して人のただ発展していない世界の様子を表現すると同時に、日本画は現在の人類と自然が共存している様子を表現する形式である。多種類の成形技術を融合し、陶磁器造形と彩絵内容を同時にデザインして、論文タイトルの主点である「立体彩絵」という論題を実演したいとも考える。
審査委員
豊福誠 片山まび 三上亮 島田文雄

王 雪阳

[疂彩](ジョウサイ)技法による立体彩絵の世界 彩絵陶磁器加飾技法における立体絵画表現と技術応用


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