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「静寂とミニマリスムの探求」

ステファニアク アンナ

 序論では、本論文にて分析する事にした主題、研究分野、及び選択した様々な文化について説明する。本論文で考察するのは主に以下のような問いである。視聴的静寂は必要なのか?以前、同様の話題に触れた作家は存在するのか?もし存在するとしたら、彼らの動機やもたらした結果は何か?
さらに、過去の業績を概観し、この度取り組むことになった主題との関連性を調べる。
本論文の解説は3章で構成されている。最初に、自分にとって「静寂」と「ミニマリズム」はどういうものなのか、そして何故両者を繋げようと思ったかを解説していく。
第1章はミニマリズムに焦点をあてる。ミニマリズムという運動の歴史およびマニフェストをたどりながら、この思潮を創始した最も代表的な作家たちの姿勢を述べる。この思潮がアジア大陸まで影響を及ぼしたか、そしてアジアの諸文化にて、いかに表されたかを分析する。
次にはデザイナー、建築家、写真家、インスタレーション作家等を中心に、現在のミニマリスト作家たちの簡単な解説おする。続いて、ヨーロッパ、アメリカ、アジアのガラス作家のいくつかの作品を選択し、分析する。それぞれの共通点と相違点(話題の選択や用いられた技術など)を探し当て、その原因について考える。
また、生活習慣としてのミニマリズムについて簡潔に語る。その中に、日本で流行っている「3Rs+R」の規則(reduce, recycle, reuse and refuse)、地産地消の傾向、又、より極端な「100品」と言う生活スタイルの様な例を挙げられる。さらに、いつからこのような傾向が始まったか、そして、日本の禅をはじめとする昔からの思想や哲学との関連性があるか否かを調べる。
第2章は静寂について次のように順番に分析する:静寂の種類、形態、役割および可能な意味。同章の最後に様々な文化における、それぞれの静寂に関する解釈を分析する。特に日本の文化における静寂の重要性を重視して分析していく。
さらに視聴覚汚染問題と、それに特別に悩まされている住民の心身への影響に焦点をあてる。
次の節で音楽における静寂を分析する為に、ジョン・ケージ、フィリップ・グラス、武満徹といった作曲家が、どの様なインスピレーションや目的を持ってこの話題に対して臨んできたかについて語る。
続いて、ヨーロッパ、アジア、アメリカの作家による詩や作文を分析して、文学における静寂について触れていきながら、ポーランドおよび日本の作家に焦点を当てる。いくつかの作品を選択したうえで、その中に静寂に関する引用、及び静寂の種類、意味、可能な解釈などを探しあてる。
また美術に於ける静寂について解説する。冒頭で写真、絵画、アートインスタレーションといった分野での役割について述べる。さらに、パントマイムや舞踏を始めとする舞台芸術における静寂について簡単に語る。
論文の主要分 はガラスアートに関する静寂である。それぞれの文化背景を持つ様々なガラス作家を選択して、彼らが本主題にどの様な姿勢で臨んだかについて述べて、その共通点と相違点を探し当てていく。彼らがどのようなテーマを選んだか、どのような静寂の種類を表したか、作品自体の中の重要性などを細かく調べる。尚、彼らが選んだ素材、技術、色調、規模などのような表現手段をも分析していく。
芸術(美術)に対する哲学及び宗教のあらゆる影響についても言及する。アートにおける静寂と哲学や宗教の基準との繋がりの有無を探っていく。この章の最後にいかに以上で分析した作品が自分の当主題への理解力に影響を及ぼしてきたか、そして自分の今後の作品にどの様に影響及ぼしそうか、について述べる。
第3章は私の作品の解説且つ分析になる。最初に今まで作ってきた作品がどれくらい本論文のテーマに関係するか、分析する。それから、この話題を選ぶまでのインスピレーションと思考について述べる。過去の作品の背景にある主な考えや目標を解説して、作品の規模や形の選択について語る。
次のような順番にて、 自分のオリジナル作品を解説していく。最初に各作品のテーマとその背景にあるインスピレーションについて説明する。そして、似たような話題に触れた事がある他人の作品に関して簡単に分析していく。最後に、自分の作品の主な想定や考え、目的について説明する。この区分はスケッチ、企画(棄却されたのも含めて)、模型、技術的な試験などを述べた後、実際に出来上がった作品に焦点を当てる。作品が最初の想定と一致しているか否か分析して、最終的な結果を確認する。さらに、いかに作品に対する知覚が展示の仕方や照明、環境によって影響されるかを研究する。鑑賞者の意見を集めて分析していく。この節の要約として、私の最終的思考と意見を述べる。
次に放棄した企画について解説する。なぜ企画を断念したかを簡単に説明する。
この節の末尾に今後の企画について語る。自分の作品の発展の行方について解説する。将来、どのような形、どのような話題に基づいて作品を作っていくか述べる。
論文の最終部分 は主題の幅広さをもう一度主張しながら、これまで集めた情報を簡単に整理して紹介する。自分の作品と他人の作品の分析によって結論を出す。個々の鑑賞者による作品に対する個人的知覚の重要性、及び個人的な解釈の可能性を評価する。

さらに、序章で述べた想定と構想を再検討する。自分の過去の考え方を本論文での考察を通 して得られた現在の意見と比較する。なお、冒頭で提示した疑問への回答も検討する。最終章で結論を述べ本論文のまとめを行う。
審査委員
藤原信幸 小松佳代子 豊福誠 三上亮
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ステファニアク アンナ

「静寂とミニマリスムの探求」


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