Oil Painting
場が規定する絵画様式における対話の過程
田中 駿
本論は、筆者の博士審査作品《ある“美しさ”の構築にまつわる不確かな話(ドキュメンテーション)(仮)》の解説を中心とし、筆者の制作根拠であり「独自の価値を生むための共創」 について論述するものである。
序章第一節では、美術という社会が形づくる絵画の価値に対して、美術の領域を超えて絵画の普通的な価値の検証を目指す筆者の制作動機の根本を著す。また筆者の創作研究における大目標である、「他にない独創性を持った絵画」 の指す意味とその重要性を述べる。
序章第二節 は先行研究として筆者がこれまで制作してきた作品に触れる。自作の大半は「場と事物(展示空間と絵画) 」 を主題としており、社会が規定する価値の検証という本論の論旨に通じるものである。
序章第三節は他者と協力し絵画を制作する審査作品について概要を述べる。本作品は”美しさ”が生まれるとはどういうことか、という主題に向けて絵画的な秩序を他者と共に作る弁証法的手法、またその価値を生む場としての「絵画が掛けられる住宅」の記録を行うところまで、本作品の制作過程を記述する。
一章は筆者の創作の中心に位置する絵画について記述する。
一節は絵画に関する考察を行う。筆者が捉える絵画の“美しさ”とは秩序である。絵画に描かれる造形的な秩序、絵画に語られる物語としての秩序を総括して「様式」と呼ぶと筆者は認織している。そこに付して、なぜ秩序に感覚的な情緒を得るのか、筆者なりの考察へと繋げていく。
二節は絵画の造形性について、古典絵画や抽象画を引用しつつ筆者の持つ基本的な所感を述べる。造形から逃れられない絵画の不自由さの価値を記述する。
三節は絵画の物語性について考察する。絵画は造形性と同様、物語からも逃れられないではないだろうか。画家は物語とどう距離を測るべきか、筆者の所感を述べる。
四節は絵画と場の関係性を論じる。造形的にも物語的にも絵画はそれが設置される場と関係する。額縁が窓枠の比喩であったように、絵画は建築と共に進歩してきた。建築と絵画について、ゴヤ「着衣のマハ」「裸のマハ」や、襖絵、ステンドグラス等を引用しつつ論述する。
二章は創作における対話について論述する。
一節は美術史と個人史について、物語の観点から言及する。美術史に介入するアーテイストの個人史は、それら全てが物語として機能しているのではないだろうか。アーテイストが自己を語るのでなく他者を語ることの現代的な意味合いを述べる。引用として文学におけるテキスト論の限界について触れた。
二節は、絵画制作における「自己との対話」と「場との対話」について論じる。自己との対話とは制作時に起こる絵画との対話である。画面上に秩序を構築する上でのアクシデントとそこで得る思いもよらないアイデアについて記す。また場との対話とは作品を他者や社会に提示する上で行われる。評価という明確な軸を語ることによる社会と作品との対話について言及する。続けて場と自己の同一化の重要性と疑問について記述する。
三節は絵画様式の成立過程を対話の観点から述べる。設問、イラストや西洋古典絵画等、幾つかの引用と例を上げながら様式の洗練に関する普通性を考察する。
三章では審査作品との関連を踏まえ、リレーショナル・アートに関する論述を行う。
一節は他者との関係そのものを主題とするリレーショナル・アートの概要を述べる。
二節はリレーショナル・アートを世に広める役割を果たした書籍『関係性の美学』に対
する批判的論文『敵対と関係性の美学』について、引用を用いつつ言及する。
三節はリレーション(関係性)そのものを目的とするリレーショナル・アートに対し、ウンベルト・エーコの「すべての作品は開かれているJという主張を引用し、関係性は目的ではなく手段であるべきではないだろうか、という筆者の所感を述べる。
四章は独創性について言及する。
一節は独創性が持つ普通的な価値を論述する。
二節は独創性をある方向性において体現するアールプリュットの作者の紹介を行った。
アールブリュットの天才性と彼らがアーテイストたりえない事由を述べる。
三章二節は意識と無意識を同時に得ているように感じられるアールプリュットの作者に触れる。また彼らの切実な物語についても言及する。
三節は、独創性と作品の需要者の関係性について述ベる。
五章は審査作品のアートドキュメンテーションとしての側面に触れ、記録の作為について言及する。
一節は記録することの作為と物語の虚構性について触れる。
二節は、記録の作為を言及するにあたり、宮本常ーによる民俗誌『土佐源氏』の概要を記す。
三節は『土佐源氏』が創作であるという『宮本常ーと土佐源氏の真実』を引用し、記録の作為について記述する。
四節では記録を物語であると規定し、そこでのリアリティを宮本常ーによる「生活誌」という言築を引き合いに出し記述する。
六章は審査作品における協力者とのやり取り、また協力者の語る個人史についての記録を記載する。
終章は、新たな価値を生むための他者との共創について、領域の境界線上で絵を描くこと、として結ぶ。
序章第一節では、美術という社会が形づくる絵画の価値に対して、美術の領域を超えて絵画の普通的な価値の検証を目指す筆者の制作動機の根本を著す。また筆者の創作研究における大目標である、「他にない独創性を持った絵画」 の指す意味とその重要性を述べる。
序章第二節 は先行研究として筆者がこれまで制作してきた作品に触れる。自作の大半は「場と事物(展示空間と絵画) 」 を主題としており、社会が規定する価値の検証という本論の論旨に通じるものである。
序章第三節は他者と協力し絵画を制作する審査作品について概要を述べる。本作品は”美しさ”が生まれるとはどういうことか、という主題に向けて絵画的な秩序を他者と共に作る弁証法的手法、またその価値を生む場としての「絵画が掛けられる住宅」の記録を行うところまで、本作品の制作過程を記述する。
一章は筆者の創作の中心に位置する絵画について記述する。
一節は絵画に関する考察を行う。筆者が捉える絵画の“美しさ”とは秩序である。絵画に描かれる造形的な秩序、絵画に語られる物語としての秩序を総括して「様式」と呼ぶと筆者は認織している。そこに付して、なぜ秩序に感覚的な情緒を得るのか、筆者なりの考察へと繋げていく。
二節は絵画の造形性について、古典絵画や抽象画を引用しつつ筆者の持つ基本的な所感を述べる。造形から逃れられない絵画の不自由さの価値を記述する。
三節は絵画の物語性について考察する。絵画は造形性と同様、物語からも逃れられないではないだろうか。画家は物語とどう距離を測るべきか、筆者の所感を述べる。
四節は絵画と場の関係性を論じる。造形的にも物語的にも絵画はそれが設置される場と関係する。額縁が窓枠の比喩であったように、絵画は建築と共に進歩してきた。建築と絵画について、ゴヤ「着衣のマハ」「裸のマハ」や、襖絵、ステンドグラス等を引用しつつ論述する。
二章は創作における対話について論述する。
一節は美術史と個人史について、物語の観点から言及する。美術史に介入するアーテイストの個人史は、それら全てが物語として機能しているのではないだろうか。アーテイストが自己を語るのでなく他者を語ることの現代的な意味合いを述べる。引用として文学におけるテキスト論の限界について触れた。
二節は、絵画制作における「自己との対話」と「場との対話」について論じる。自己との対話とは制作時に起こる絵画との対話である。画面上に秩序を構築する上でのアクシデントとそこで得る思いもよらないアイデアについて記す。また場との対話とは作品を他者や社会に提示する上で行われる。評価という明確な軸を語ることによる社会と作品との対話について言及する。続けて場と自己の同一化の重要性と疑問について記述する。
三節は絵画様式の成立過程を対話の観点から述べる。設問、イラストや西洋古典絵画等、幾つかの引用と例を上げながら様式の洗練に関する普通性を考察する。
三章では審査作品との関連を踏まえ、リレーショナル・アートに関する論述を行う。
一節は他者との関係そのものを主題とするリレーショナル・アートの概要を述べる。
二節はリレーショナル・アートを世に広める役割を果たした書籍『関係性の美学』に対
する批判的論文『敵対と関係性の美学』について、引用を用いつつ言及する。
三節はリレーション(関係性)そのものを目的とするリレーショナル・アートに対し、ウンベルト・エーコの「すべての作品は開かれているJという主張を引用し、関係性は目的ではなく手段であるべきではないだろうか、という筆者の所感を述べる。
四章は独創性について言及する。
一節は独創性が持つ普通的な価値を論述する。
二節は独創性をある方向性において体現するアールプリュットの作者の紹介を行った。
アールブリュットの天才性と彼らがアーテイストたりえない事由を述べる。
三章二節は意識と無意識を同時に得ているように感じられるアールプリュットの作者に触れる。また彼らの切実な物語についても言及する。
三節は、独創性と作品の需要者の関係性について述ベる。
五章は審査作品のアートドキュメンテーションとしての側面に触れ、記録の作為について言及する。
一節は記録することの作為と物語の虚構性について触れる。
二節は、記録の作為を言及するにあたり、宮本常ーによる民俗誌『土佐源氏』の概要を記す。
三節は『土佐源氏』が創作であるという『宮本常ーと土佐源氏の真実』を引用し、記録の作為について記述する。
四節では記録を物語であると規定し、そこでのリアリティを宮本常ーによる「生活誌」という言築を引き合いに出し記述する。
六章は審査作品における協力者とのやり取り、また協力者の語る個人史についての記録を記載する。
終章は、新たな価値を生むための他者との共創について、領域の境界線上で絵を描くこと、として結ぶ。
審査委員
齋藤芽生 伊藤俊治 保科豊巳 佐藤一郎 坂田哲也
齋藤芽生 伊藤俊治 保科豊巳 佐藤一郎 坂田哲也