Inter-Media Art
ヴァーチャルペルソナを通じた変身願望の表現研究
朴 娜炫
我々は自分たちの周りのすべてと常に関係を結びながら生きている。また、物質的な現実のなかだけでなくデジタル技術により誕生した仮想空間の巨大なネットワークでも関係を形成している。さらに、SNSの普及と通信ディパイスの普及化によってコミュニケーションはネット社会と実際の社会を区別する必要性が消えた世界で行われていて、そのたびに個人はさまざまな姿で自分自身を表現することとなった。最近芸術界でよく言及されている「ポストインターネット」は、現在私たちが享受しているオン・オフラインの区別が成立していない世界を表現する言葉として用いられている。
本稿の目的は、ポストインターネット時代の仮想空間でのマルチアイデンティティとヴァーチャルペルソナの特性について考察し、これに基づいてヴアーチャルペルソナをテーマにした自分の作品の基本概念や表現方法に適用するためのものである。
仮想空間の中ではわれわれが望むように外見を現実のものとは相反なものを選択して表象することができ、社会活動を通して構築してきた個人のアイデンティティを隠し、内面に潜んでいた別の顔をあらわすに容易である。個人は現実世界と仮想世界、両方の場所で独立した人格として存在する。言いかえると、実際の世界ではひとつの自我をもつ人格で、仮想空間ではいくつかのアイデンティティをもつ人格として行為の主体となる。本稿で扱っているマルチアイデンティティ(Multi-identity)はひとつの体をもった本来の自己が複数のIDをもって仮想空間での活動をしたり、独立した性格をもつ複数のベルソナを混合して、自己を多様に表象する現象として理解できる。
多くの学者たちは仮想空間であらわれる新しいアイデンティティをペルソナと定義する。デジタル仮想空間では自分がどのような方でコミュニケーションを求めるにしても、自分だけの方式と形態で自己表現をしながらペルソナを形成することになる。このとき自己表現の媒介でありその結果ともなる形態を、本稿では新たに作り上げた仮想で本質的ペルソナ、つまりヴアーチャルペルソナ(Virtual persona)とよぶ。
仮想空間の中で形成するヴァーチャルペルソナは、仮想空間のアイデンティティ概念であるフレキシブル・アイデンティティ(flexible identity)概念とカムフラージュ・アイデンティティ(camouflage identity)概念で説明できる。ヴアーチャルペルソナをフレキシブル・アイデンティティの観点からみる立場は、ユーザーたちが現実の自分とは違う姿で多元的なアイデンティティを具現して、自由に相手との相互作用の機会を持つという肯定的視点に基づいている。一方、カムフラージュ・アイデンティティは他者に見えるものやありのままのものではないという、つまりアイデンティティに偽造という意味に集中して論じている。
人々はデジタル仮想空間の中で自分がなりたいアイデンティティをもとにアバター、アイコンなどを作り出す創造行為を通じて、現実に見られる自分の外的人格としてのペルソナを否定し、デジタル空間で他のアイデンティティに変身したい欲望を投影した「ヴァーチャルペルソナ(Virtual persona))を創造しようとする。また、物質世界にいる私たちの体は、仮想空間のコミュニティに属することによって仮想と実在を行き来する新しい関係を形成しながら2.5次元に置かれるが、この現状が現実で再現された2.5次元概念は、超身体的存在である2次元のキャラクターに身を譲るのだと解釈できる。ヴァーチャルペルソナを通じて個人は現実での自分の欠乏を隠してより良い内的・外的イメージとして代替的ペルソナを形成し、実際顔も知らない人と多くを共有するだけでなく、実際には存在しない人物とのコミュニケーションまで可能であり、これらの経験をもとに複数のロールプレイングを行いながら、自分とは本質的に異なる存在に「なってみる」のである。
個人が仮想空間で様々な形のヴァーチャルペルソナを介してマルチアイデンティティとして存在し、それを積極的に表出するように、芸術作品でも作家の意図に応じて、複数のアイデンティティが、さまざまな姿で現れている。これらの作品では仮想のイメージを前面に出して作家本人の自我を投影したり、作家や特定の人物が外見を変身させてマルチアイデンティティになる。また、奇形で諧謔な形態に身体を変形して、既存の普遍的な形態や境界を解体、破壊し、デジタル技術を芸術分野に取り入れて仮想身体を具現する。
個人の好みや承認されたい人物像をあらわすという意味で、服装はその人のペルソナを解り得るための良い手がかりになる。自らが着用していた服を用いて制作した仮面をかぶるというプロセスで制作した作品を通じてマルチアイデンティティに変身することは、実際に変身を遂げてもた変身しようとする欲望を表現しても、潜在意識が表出されやすい芸術のカを借りて実際の身体がもっているペルソナをヴァーチャルペルソナをもって隠してしまうことで、二極に分裂した外的・内的なもの、現実と空想、妥協と願望を共存させようとするのである。表出と変身の媒介となるヴァーチャルペルソナは、区分されていたものが共存するマルチアイデンティティの特性をあらわしている。ヴァーチャルペルソナは、私たちがもつことができるもうひとつの自我として、芸術分野のあいだでも積極的に表現できるテーマであり、表現媒体になると期待している。
本稿の目的は、ポストインターネット時代の仮想空間でのマルチアイデンティティとヴァーチャルペルソナの特性について考察し、これに基づいてヴアーチャルペルソナをテーマにした自分の作品の基本概念や表現方法に適用するためのものである。
仮想空間の中ではわれわれが望むように外見を現実のものとは相反なものを選択して表象することができ、社会活動を通して構築してきた個人のアイデンティティを隠し、内面に潜んでいた別の顔をあらわすに容易である。個人は現実世界と仮想世界、両方の場所で独立した人格として存在する。言いかえると、実際の世界ではひとつの自我をもつ人格で、仮想空間ではいくつかのアイデンティティをもつ人格として行為の主体となる。本稿で扱っているマルチアイデンティティ(Multi-identity)はひとつの体をもった本来の自己が複数のIDをもって仮想空間での活動をしたり、独立した性格をもつ複数のベルソナを混合して、自己を多様に表象する現象として理解できる。
多くの学者たちは仮想空間であらわれる新しいアイデンティティをペルソナと定義する。デジタル仮想空間では自分がどのような方でコミュニケーションを求めるにしても、自分だけの方式と形態で自己表現をしながらペルソナを形成することになる。このとき自己表現の媒介でありその結果ともなる形態を、本稿では新たに作り上げた仮想で本質的ペルソナ、つまりヴアーチャルペルソナ(Virtual persona)とよぶ。
仮想空間の中で形成するヴァーチャルペルソナは、仮想空間のアイデンティティ概念であるフレキシブル・アイデンティティ(flexible identity)概念とカムフラージュ・アイデンティティ(camouflage identity)概念で説明できる。ヴアーチャルペルソナをフレキシブル・アイデンティティの観点からみる立場は、ユーザーたちが現実の自分とは違う姿で多元的なアイデンティティを具現して、自由に相手との相互作用の機会を持つという肯定的視点に基づいている。一方、カムフラージュ・アイデンティティは他者に見えるものやありのままのものではないという、つまりアイデンティティに偽造という意味に集中して論じている。
人々はデジタル仮想空間の中で自分がなりたいアイデンティティをもとにアバター、アイコンなどを作り出す創造行為を通じて、現実に見られる自分の外的人格としてのペルソナを否定し、デジタル空間で他のアイデンティティに変身したい欲望を投影した「ヴァーチャルペルソナ(Virtual persona))を創造しようとする。また、物質世界にいる私たちの体は、仮想空間のコミュニティに属することによって仮想と実在を行き来する新しい関係を形成しながら2.5次元に置かれるが、この現状が現実で再現された2.5次元概念は、超身体的存在である2次元のキャラクターに身を譲るのだと解釈できる。ヴァーチャルペルソナを通じて個人は現実での自分の欠乏を隠してより良い内的・外的イメージとして代替的ペルソナを形成し、実際顔も知らない人と多くを共有するだけでなく、実際には存在しない人物とのコミュニケーションまで可能であり、これらの経験をもとに複数のロールプレイングを行いながら、自分とは本質的に異なる存在に「なってみる」のである。
個人が仮想空間で様々な形のヴァーチャルペルソナを介してマルチアイデンティティとして存在し、それを積極的に表出するように、芸術作品でも作家の意図に応じて、複数のアイデンティティが、さまざまな姿で現れている。これらの作品では仮想のイメージを前面に出して作家本人の自我を投影したり、作家や特定の人物が外見を変身させてマルチアイデンティティになる。また、奇形で諧謔な形態に身体を変形して、既存の普遍的な形態や境界を解体、破壊し、デジタル技術を芸術分野に取り入れて仮想身体を具現する。
個人の好みや承認されたい人物像をあらわすという意味で、服装はその人のペルソナを解り得るための良い手がかりになる。自らが着用していた服を用いて制作した仮面をかぶるというプロセスで制作した作品を通じてマルチアイデンティティに変身することは、実際に変身を遂げてもた変身しようとする欲望を表現しても、潜在意識が表出されやすい芸術のカを借りて実際の身体がもっているペルソナをヴァーチャルペルソナをもって隠してしまうことで、二極に分裂した外的・内的なもの、現実と空想、妥協と願望を共存させようとするのである。表出と変身の媒介となるヴァーチャルペルソナは、区分されていたものが共存するマルチアイデンティティの特性をあらわしている。ヴァーチャルペルソナは、私たちがもつことができるもうひとつの自我として、芸術分野のあいだでも積極的に表現できるテーマであり、表現媒体になると期待している。
審査委員
佐藤時啓 伊藤俊治 八谷和彦 藤原えりみ
佐藤時啓 伊藤俊治 八谷和彦 藤原えりみ