論文要旨
　本論文では、中国と日本の焼物文化の発展過程、特に焼物文化にまつわる、それぞれの国の独自性がいかにして作られ、進化してきたかという点について比較していきたい。いかにして中国の焼物が始まり、進化して日本へ伝えられ、さらなる発展を遂げたのかを、歴史的な観点から考察し、その一連の流れが文化的な考え方にどのような影響を与えたのか、また、中国・日本の現代文化への影響について着目し分析していきたい。

　中国と日本の異なった焼物文化の相違点と類似点に焦点を当てるために、両国の茶道文化や食器の文化の重複部分などの具体的な例を挙げる。また、焼物文化がどのように一般文化全般との間に相互性を築き上げてきたのか、その原動カを研究していきたい。さらに、これらの中国・日本の焼物文化にまつわる概念を、アメリカの現代的な焼物文化をより目的を持って発展させるために利用するための方法を考察し、示唆していきたい。
　本論文の目的は、焼物文化の詳細な技法や素材に焦点を当てることではない。制作において、個々に、そして集団に対して大きな影響を及ぼすより大きなカをより明確にイメージすること、アメリカの現代的な焼物文化に強力な統一性をもたらすために、中国・日本の焼物文化に対する概念をどのように反映させることが出来るかという点をより積極的に考えることに重点を置く。

研究作品
　論文題目を出発点として捉えると、私は研究作品として、現代のアメリカの焼物文化を集約した陶器のオブジェ制作を試みたい。アメリカは歴史的にキリスト教国家であるが、現在、若者たちの宗教離れは増加の一途を辿っている。それは人々が信仰心を完全に失ったということではないが、統一された宗教が現代社会に生きる人々の精神性に合わなくなってきたということである。そこで、私は人間の本質や生活感に黙想を呼び起こすことが出来る、メビウスの形状を通して、抽象的かつ非宗教的なオブジェを制作していきたい。