Craft
「ベトナムの漆芸と日本の漆芸」技術と表現の比較研究を通して展開する未来
チィエウ カィン ティエン
ベトナムはアジアの中で海に広く面している為、様々な国の影響を受けて現在に至っている。そのベトナムから出土する漆芸は変化に富んでいて、その結果独自の漆芸文化が発達してきた。日本においては世界最古の漆製品(縄文遺物)が出土するなど、興味深い物が多く、関心は尽きない。この日本とベトナムの漆芸の歴史的考察から、ベトナムで研究したことを生かして、東京藝術大学でさらに得たものを糧として、日本とベトナムの漆芸の違いが両国の文化の相違、技術の相違、芸術に対する考え方の違いからくると推論し、それを実際に検証することで、日本とベトナムに統一の漆芸の将来について論究したい。
第一章ではベトナムの漆芸史に関して、ベトナムが主に影響を受けた国々、つまり中国、フランス、との美術交流史である。ベトナム漆は、およそ2500年前のドンソン文化の時代に、ベトナム北部の紅河流域を中心に成立した。東南アジア初期の金属器文化の時代から使われていたという証拠が見つかっている。ベトナム人は漆の木から採取した樹液を使って、日常生活において使用する漆器を作っていたのである。ベトナム漆芸史はこの後中国、フランス、日本の美術から影響を受け、独自の表現が形成されていった。
第一章は四つの内容で構成されている。第一節はベトナムの漆芸史上、最古の遺物について論究する。漆器がハイフォン県(首都ハノイから約100キロメートルの位置)にある墳墓で発見されている。べトヘー壌墓からは、漆塗りの木棺と漆塗りの薄い石片も出土した。この石片の朱と黒の対比は、日本の縄文時代の漆遺物にも同様に見られため、二つを比較することで興味深い成果を期待することができると予測する。日本の各時代の地層からは夥しい漆器が出土しており、現在まで、時代を超えて伝わっている状況を見ると、日本が世界から「漆器の国Jと称賛されているのも理解できる。両国の遺跡から出た漆芸品を比較し、古い時代の漆芸文化について論述する。
第二節は中国の影響により漆芸として発展した漆芸の研究である。17世紀~19世紀には、諸外国の使節に対して漆器を贈るなど、漆工芸は外交上の重要な産物となっていた。中国との関係を採る時に重要な人物であるタン・ル(1470年)は、ベトナムの漆産業の祖と言われている。ベトナムの15世紀からのレィの時代( 1427年一1789年)にはタン・ルが、中国の河南省へ旅し、漆の研究をしたという記録が残っている。彼は中国から故郷へ戻り、さらに研究を続けたため、故郷であるピンポン市は、漆の発祥地と考えられるようになった。彼が習得してきた中国様式の漆の技術を伝えたことにより、現在に至る迄、ベトナムの漆工業がこの地を中心に発展してきたのである。
第三節はフランスの影響により、近代絵画の素材として発展した漆絵について述べる。漆絵は独自の表現をもつベトナムの漆芸史として知られている。
第四節はベトナムと日本の漆芸交流史の研究である。フランス植民地時期、インドシナ美術学校漆芸学部アリス・アイメ教授(フランス人画家)が来日し、日本の漆芸文化に関する様々な研究をした。日本の様式を学び取った彼女はインドシナ美術学校において、学生たちに日本漆の技法を伝授した。
第二章では日本の伝統的漆芸における技術と表現の研究について述べる。日本でのと漆文化の関係よび日本漆芸の伝統技法について二つの内容を研究している。筆者は現在漆芸研究室で日本の漆芸を研究しており、漆の伝統技法を学ぶだけでなく、日本の生活の中で漆文化がどのような役割を果たしているかについても、調査を進めてきた。
第三章ではベトナムの漆芸、日本漆芸に関する技術と表現の比較研究について述べる。本稿において最も重要な内容となると考えている。これまで日本に3年滞在し、東京藝術大学で勉強し、日本漆の伝統技法や表現などの知識を吸収できたため、日本の漆芸とベトナムの漆芸の技術と表現について比較する能力が身についたと考える。ベトナムの漆の特徴について紹介し、日本の伝統的な漆芸の技術と表現との比較研究を行う。東京藝術大学大学院博士課程での研究成果を元に、深い知識と実践に基づいて、日本の漆と比較することで、我が国ベトナムの漆の長所と短所を把握しながら、ベトナム漆文化に私が貢献出来る役割を真撃に実行していきたい。また両国の技法を融合した実験をもとに自分の新しい技術を創造したいと考える。
第四章では私がベトナム漆絵の現代技法を持つ者として来日し、東京藝術大学で様々な日本美式と漆芸伝統的な技法を学んだことをもとにし、自己の作品の成果について発表する。これまで私は日本の伝統的な音楽会、漆祭、茶道などのような多くの文化的社会活動にも参加してきた。その結果、漆は伝統美術というだけでなく、文化でもあることがよく理解できた。漆は私にとって、日本文化の知覚へと近づくためのかけ橋なのである。また、芸術の創造についての筆者の考えにも大きな変化をもたらしたため、博士課程のコンセプトとして発信をする。発表する作品は「人間と自然の関係」をテーマとしている。両国の技術と素材を融合し未来に向けて両国関係が大きく花開くことを願っている。
第一章ではベトナムの漆芸史に関して、ベトナムが主に影響を受けた国々、つまり中国、フランス、との美術交流史である。ベトナム漆は、およそ2500年前のドンソン文化の時代に、ベトナム北部の紅河流域を中心に成立した。東南アジア初期の金属器文化の時代から使われていたという証拠が見つかっている。ベトナム人は漆の木から採取した樹液を使って、日常生活において使用する漆器を作っていたのである。ベトナム漆芸史はこの後中国、フランス、日本の美術から影響を受け、独自の表現が形成されていった。
第一章は四つの内容で構成されている。第一節はベトナムの漆芸史上、最古の遺物について論究する。漆器がハイフォン県(首都ハノイから約100キロメートルの位置)にある墳墓で発見されている。べトヘー壌墓からは、漆塗りの木棺と漆塗りの薄い石片も出土した。この石片の朱と黒の対比は、日本の縄文時代の漆遺物にも同様に見られため、二つを比較することで興味深い成果を期待することができると予測する。日本の各時代の地層からは夥しい漆器が出土しており、現在まで、時代を超えて伝わっている状況を見ると、日本が世界から「漆器の国Jと称賛されているのも理解できる。両国の遺跡から出た漆芸品を比較し、古い時代の漆芸文化について論述する。
第二節は中国の影響により漆芸として発展した漆芸の研究である。17世紀~19世紀には、諸外国の使節に対して漆器を贈るなど、漆工芸は外交上の重要な産物となっていた。中国との関係を採る時に重要な人物であるタン・ル(1470年)は、ベトナムの漆産業の祖と言われている。ベトナムの15世紀からのレィの時代( 1427年一1789年)にはタン・ルが、中国の河南省へ旅し、漆の研究をしたという記録が残っている。彼は中国から故郷へ戻り、さらに研究を続けたため、故郷であるピンポン市は、漆の発祥地と考えられるようになった。彼が習得してきた中国様式の漆の技術を伝えたことにより、現在に至る迄、ベトナムの漆工業がこの地を中心に発展してきたのである。
第三節はフランスの影響により、近代絵画の素材として発展した漆絵について述べる。漆絵は独自の表現をもつベトナムの漆芸史として知られている。
第四節はベトナムと日本の漆芸交流史の研究である。フランス植民地時期、インドシナ美術学校漆芸学部アリス・アイメ教授(フランス人画家)が来日し、日本の漆芸文化に関する様々な研究をした。日本の様式を学び取った彼女はインドシナ美術学校において、学生たちに日本漆の技法を伝授した。
第二章では日本の伝統的漆芸における技術と表現の研究について述べる。日本でのと漆文化の関係よび日本漆芸の伝統技法について二つの内容を研究している。筆者は現在漆芸研究室で日本の漆芸を研究しており、漆の伝統技法を学ぶだけでなく、日本の生活の中で漆文化がどのような役割を果たしているかについても、調査を進めてきた。
第三章ではベトナムの漆芸、日本漆芸に関する技術と表現の比較研究について述べる。本稿において最も重要な内容となると考えている。これまで日本に3年滞在し、東京藝術大学で勉強し、日本漆の伝統技法や表現などの知識を吸収できたため、日本の漆芸とベトナムの漆芸の技術と表現について比較する能力が身についたと考える。ベトナムの漆の特徴について紹介し、日本の伝統的な漆芸の技術と表現との比較研究を行う。東京藝術大学大学院博士課程での研究成果を元に、深い知識と実践に基づいて、日本の漆と比較することで、我が国ベトナムの漆の長所と短所を把握しながら、ベトナム漆文化に私が貢献出来る役割を真撃に実行していきたい。また両国の技法を融合した実験をもとに自分の新しい技術を創造したいと考える。
第四章では私がベトナム漆絵の現代技法を持つ者として来日し、東京藝術大学で様々な日本美式と漆芸伝統的な技法を学んだことをもとにし、自己の作品の成果について発表する。これまで私は日本の伝統的な音楽会、漆祭、茶道などのような多くの文化的社会活動にも参加してきた。その結果、漆は伝統美術というだけでなく、文化でもあることがよく理解できた。漆は私にとって、日本文化の知覚へと近づくためのかけ橋なのである。また、芸術の創造についての筆者の考えにも大きな変化をもたらしたため、博士課程のコンセプトとして発信をする。発表する作品は「人間と自然の関係」をテーマとしている。両国の技術と素材を融合し未来に向けて両国関係が大きく花開くことを願っている。
審査委員
三田村有純 井谷善恵 小椋範彦 黒川廣子 松島さくら子
三田村有純 井谷善恵 小椋範彦 黒川廣子 松島さくら子