東京藝術大学博士審査展公式サイト2015

WORKS

/ Craft

陶磁器による美少女フィギュアの表現

岡﨑 春香

審査委員
●豊福誠(工芸科教授)、◯片山まび(芸術学科准教授)、◎島田文雄(工芸科教授)、菅野健一(工芸科教授)
私は漫画やアニメといった現実ではあり得ないような世界観を持った物語に魅力を感じ、多くの影響を受けてきた。その物語の主人公、特に美少女たちに私は強く感情移入し、その世界の住人になって物語の中に入りたいという願望を持つことがある。私の制作は、こういった感情を持ったことから始まっている。
そんな私の欲求を満たしてくれるものの一つが美少女フィギュアであった。
陶磁器の歴史の中でも美少女をモチーフとした磁器人形があり、私は興味をひかれた。その多くは西洋のものであり、日本ではあまりなじみのないものであった。例えば、西洋のマイセンでは美少女をモチーフにした磁器人形が作られている。磁器特有の柔らかさや、釉薬のなめらかな質感、美しく煌びやかな彩色、美少女特有の柔らかく繊細な表情が表現されたことによる、魅力的な作品が多くある。
日本でも、磁器人形が作られているが、その多くが西洋の影響を受けた形となっている。技術的な面はしっかり日本に根付いているようにみえるが、作品の形は日本にあるととてもちぐはぐに見える。そうしたことから、自身の作品である美少女フィギュアを陶磁器によって表現することでの可能性に興味意を持った。
本論文では美少女フィギュアと磁器人形の造形や技法さらに歴史的背景について考察し、自身の作品である磁器による美少女フィギュアの表現方法を見つけていくことを目的とする。
第一章では、フィギュアの定義と歴史、作られた経緯などについて述べる。そして、フィギュアにおけるジェンダーの差について考察する。
さらに、現代日本の美少女フィギュアの造形的特徴について、漫画やアニメの平面的な表現と、フィギュアの立体的な表現について述べ、自作と美少女フィギュアの関わりについても考察する。
第二章では、磁器人形の造形の特徴と、歴史や作られた経緯について述べ。海外と日本の磁器人形とレース人形の造形を論じ、その技法についても述べ、自作の制作過程と比較し、表現の可能性を考察する。
第三章では、自身のこれまでの作品を例に、自身の作品が作られた経緯、表現の変換と、技法の発展について分析し、博士審査提出作品へと繋る。
第四章では、美少女をモチーフとした人形や作品をいくつか例に挙げ、自作と比較し、自作の定義づけ、位置づけをすることで、博士審査提出作品への発展とする。さらに、その制作意図、制作工程と技法、材料を述べ結論へと結び付けていく。

現代日本のフィギュアと、海外と日本の磁器人形とを比較していくことによって、自身の作品である磁器での美少女フィギュアの存在の位置を知り、制作していくことで、自身に必要な表現方法を見つけることができた。作品を制作する中で、磁土という素材の表現について改めて考察することもでき、表現の可能性を広げることができた。今後の制作へと繋げていくこともできると考えられる。

無題

figure 昔々~

figure 昔々~

岡﨑 春香
略歴
2011年3月 東京藝術大学美術学部工芸科卒業
2013年3月 東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻修了