ウガンダ陶芸の改善点

〜日本における備前焼の伝統を活用したケーススタディ〜

本文中の出展作品
すべての出展作品は、アジアやアフリカの楽器から着想を得ている。アジアの楽器としては、三味線や琴、小琵琶といった弦楽器、アフリカの楽器としては、特にナイジェリアのウドゥ・ドラムからインスピレーションを得た。
多くの場合、いくつかの楽器を組み合わせて、新しい形を作り出した。本研究をさらに進めて、調律の方法や形と音の関係性の理解を深めれば、これらの新しい形のアイデアを実際の楽器とすることができると考える。

パイプオルガンの形
この作品は、異なった音を奏でる多数のパイプを組み合わせたオルガン(パイプオルガン)から着想を得た。また、日本の笙(しょう)という楽器からも着想を得ている。
これらの楽器を形作る部分は、統合の象徴のように思われた。すなわち、どれか一つの部分が欠けても、楽器が奏でる音が変わってしまうという意味で、私たちの日々の生活における統合やチームワークの大切さを物語っているように思われる。

パーカッション・ポット(打楽器の壺)
これらのパーカッション・ポットは、ウドゥ・ドラムから着想を得た。これらは三つの壺のセットで、それぞれ異なる赤土を用い、異なる装飾を施し、異なる焼成条件(薪焼成、匣鉢を用いた焼成、炭素還元焼成)で焼成したものである。
これらは、異なる粘土や異なる焼成条件で製作した壺が、どのような音を出すかを試すための実験であった。また、壺が奏でる音は内部の容積にも影響を受け、実際にそれぞれの壺で内部容積は異なることが分かった。装飾は、テラ・シギラタを用いた装飾、天目釉による装飾、そして薪窯内での自然釉による装飾を用いた。

パイプオルガン ∕ パーカッション・ポット(打楽器の壺)

 

フルートのような形
この作品は、フルートから着想を得た。作品の下部の形は大きくして、上部の小さな歌口から大きな音が出るような形を狙った。
作品の上部および下部には削り出しのパターンを刻み、表面を上からもしくは下からなぞった際に音が鳴るようにした。また、作品の下部表面は様々な色のテラ・シギラタや化粧土、釉薬を用いて装飾を施した。

長い首を有するウドゥの形
この作品もまた、ウドゥ・ドラムから着想を得た。元々のウドゥ・ドラムのアイデアに長い首部を付け加え、短い首部を持つ作品と比較して、上部に与えられる空気圧がどのように異なるかを試した。この作品は本学(東京藝術大学)の穴窯で焼成し、テラ・シギラタを用いて装飾した。

フルートのような形 ∕ 長い首を有するウドゥの形

 

カリンバの形
カリンバの形の成形はチャレンジであり、実験的にナイロン繊維と混合した粘土を用いた。この作品は小さなカリンバの形を模倣して粘土で成形しており、細長い形とのバランスをとる目的で、またカリンバを想起させる目的で、キーを模したやや長い棒を付けた。この形は横に置いた楽器からアイデアを得ており、花挿として用いることができる。

打楽器の形
この作品の形は太鼓から着想を得ているが、同時にウドゥ・ドラムからもアイデアを得た。側面の穴を叩くことにより、そこから音を出すことができる。また、表面のデザインに織物工具のような模様を施した。上部の装飾には釉薬を、下部の装飾にはテラ・シギラタを用いた。焼成は、ガスを用いた電気窯において炭素還元焼成により行った。

弦楽器の壺
この弦楽器の壺の形は、カラバッシュから着想を得た。この作品はガスおよび電気窯において炭素還元条件下で焼成した。また、パーカッションにも用いることができるよう、工具からアイデアを得たパターンを表面に施した。作品に三本の弦をつけることにより、表面のデザインのパターンと実際に弦が奏でる音の間にリズムを生み出すことを意図した。
作品の下部はテラ・シギラタで装飾し、上部は私自身が考案した釉薬を用いて装飾した。

弦楽器の形(琴)
この作品の形は、日本の琴から着想を得た。より視覚に訴える形とするため、通常の琴では弦を伸ばすために削られた形をしている部分を、ドーム型の形とした。
弦を支える琴柱は、実際の琴を模して木製のものを用いた。

備前焼の壺(シェーカー)
この壺は備前土を用いて作った。表面の装飾の研究の一環として、壺の下部にはテラ・シギラタ化粧土を施した。テストピースでの検討から、テラ・シギラタは高温で様々な条件で焼成可能なこと、それぞれの条件でどのように色が変わるかということを見出していた。この壺は薪窯の一番奥まった部屋で、藁で満たしたさやに入れて焼成した。

弦楽器の壺 ∕ 備前焼の壺(シェーカー)

 

弦楽器の形1
弦楽器の形1および2は、テンプレートからの成形にロクロあるいはタタラのみを用いた、実験的な作品である。
弦楽器の形1は、タタラを用いて成形した。粘土にはナイロン繊維を練り込み、作品の強度を増して歪みを抑えるよう工夫した。
弦楽器の形2は、テンプレートから成形した。この作品を作る際のチャレンジは、紐作りでありながらタタラから成形したような見た目の印象を与えることであった。いずれの作品もガス窯および電気窯を用いて炭素還元条件下で焼成した。