序論
　時代の進歩は止まらない。新商品の発売に伴い古いものは淘汰され、昔の記憶を抱いたまま、変化はいつも起こっている。私は未来の形を想像しながら、どんな姿勢で未来の変化と向き合うのか、制作しつつ自分なりの答えを探している。

第一章　制作の始まり
　第一節　自身から
　私の制作の原点は病気で手術を受けたことだった。自分自身も病気であり、病棟で苦しんでいる人たちの状況を見たところから、私の想像が始まった。もし、人間の内臓や身体の一部分を機械のように、新品に入れ替えることができれば、同じ部品が何個もあったら、人の苦しみを少しでも抑える事ができる。このような想像から、作品の中に同様なモチーフが繰り返し登場する制作方法が始まった。
　第二節　制作方法から
版画という制作手法は、きちんと事前準備が出来れば、印刷、転写や複製などの技術により、同じものをより簡単に素早く複製することができる。
　第三節　他の世界から
自分が読んだ小説、映画やアニメから貰った経験を積み重ね、それらすべてが私の世界観を構成する基礎になった。
　　第一項　　小説からのルーツ
　　第二項　　映画からのルーツ
　　第三項　　漫画からのルーツ

第二章　私に関するパラレルワールド
　機械や未来について興味を持ち、自分の考えを入れた作品を通して、未来の形を描く人たちがいる。社会状況を理解したうえで、異なる素材、異なる視点、異なる立場から機会と未来について作品を通して語り出した。こんなようなパラレルワールドはいくつかあり、類似したモチーフやテーマを、違う時代の違う作家の違う作品から発見することができる。
　第一節　二十世紀の作家へ
二十世紀の人類の生活は、科学や戦争などで人類の生活に重大な変化が発生した百年だ。産業革命により、蒸気の力を利用して機械を動かすことが可能になり、蒸気機関車や蒸気船の出現は交通の世界にも革命を起こした。工場での人力は機械に入れ替わり、大量生産は消費に刺激を与え、人々の生活を改善した。
　　第一項　　未来派
　　第二項　　メタボリズム（新陳代謝）
第二節　二十一世紀の作家へ
現代の作家のなかに、まだ定義されきていないが、私と同じものに注目した作家の紹介。

第三章　未来を構成するモチーフ
　私の制作世界は一個一個の「部品」を集めて、それらの組み合わせにより、私が想像している未来の世界を具現化したものである。
　私が考えている世界は、その小さい部品から、すこしずつ構築し、増殖している世界である。現実のこの世界も同じだ。異なる人種、異なる植物、異なる動物、異なる生物という部品がなければ何も成立しない。私の制作のなかで「部品」たちは、地球上の異なる人種、異なる植物、異なる動物、異なる生物のように、互いの関係を分裂、融合、分割、再合成、分化、構成し、その繰り返しのなかで、私の世界を拡大していく。
　第一節　機械とイメージ
機械は人の代わりに、より効率よく仕事をできるものだと私は考える。機械は人間の手足となり、製造や生産などの仕事は、全般的に機械やパソコンに任せることができるようになった。
　第二節　ロボットと身体
ロボットの発展は機械と直接な関係がある。数多く部品を組み合わせて、機械になる、数多く機械を組み合わせたその集大成が「ロボット」だ。
　第三節　版画とアウラ
版画を印刷過程の中で、不確定な要素や緊張感を混ぜつつ、描いた原稿と印刷した作品の距離を繰り返し調整している。版画の制作者達が、この原稿と作品の曖昧な関係に魅了され、この中のバランスを探しながら制作をしていると考えられる。

第四章　私なりの未来の世界観
　私は未来の人類と機械生活に対する考えを、悲観的な見方と楽天的な捉え方。二つの方向から見ている。将来の人間がどんな姿で生きていくか？将来の人間がどんな生活をするか？過去の人々より幸せか？いまの我々より幸せか？また私と同じ、さらに遠く未来を想像するか？
　この無数の疑問は、私の作品制作と同時に生み出されている。
　　第一節　私と未来の連結
　　第二節　版画と支持体の連結
　　第三節　版画と版画の連結

第五章　結論
　二年ほど前に来日して、日本、特に東京はハイテクノロジーの都市ということを強く感じた。ここで生活する人々はいろいろな所で機械と関わっていて、より便利な日常を過ごしている。人の体温に合わせて室温を調整するクーラー、自動掃除できる丸いロボット、複数枚の紙幣を入れてもきちんと釣り銭が出る券売機、それまでにはなかったインスピレーションを受けた。自分の作品の中で、このインスピレーションを取り入れたいと考えている。私の色が無い未来世界の活気と色彩を増やしたいと思う。

第六章　図版とそのストーリー