東京藝術大学博士審査展公式サイト2015

WORKS

/ Architecture

演算的設計手法 その有為性

砂山 太一

審査委員
●金田充弘(建築科准教授)、◯光井渉(建築科教授)、◎森山貴之(横浜美術大学准教授)、中山英之(建築科准教授)
本研究は,コンピュータプログラミングを用いた設計手法を取り扱っている.

コンピュータプログラミングを用いた設計手法とは,一般的にコンピュテーショナル・デザインと呼 ばれ,数値変数や手続き操作によって形状を決定していく手法のことを指す.この手法は,情報化機器 や数値制御のデジタル加工機など物質的生産性と情報技術を結びつけるテクノロジが急速に一般化しつ つある現在,デジタルデータをより高精度に扱う方法として設計領域を中心に活用が進んでいる.
本研究は,情報を媒体として設計技術と生産技術が一続きのプロセスに統合されつつある状況下にお いて,情報的次元と物質的次元の横断性に着目し,独自の手法論として《演算的設計手法》を提起し, 実制作を通しその意味を検証することを目的としている.
情報技術の発展を,技術発展史的な合目的的価値観の言及に留まらず,人間の創造性にかかわわる問 題と受け止め,コンピュータを用いた設計のより有為的な機微の立証を目指す.また,本研究論文と博 士作品は共に一組の研究として捉えられ,本研究論文は博士制作研究の技法的側面を説明するためのも のと位置づける.

本研究は大きく2つのパートから構成される. 一つは本研究が提起する《演算的設計手法》に到る背景整理・前提概念の説明,残り一つは,博士制作 研究に関するより具体的なプロセス説明である.

一つ目の背景整理・前提概念の説明は第1章から第2章にかけて行っている.計算機を使用した設計 の歴史と背景および用語的定義を整理し,本研究が提案する《演算的設計手法》の概定義付けを行う. コンピュータ支援型の設計手法および生産技術 =CAD/CAM などの歴史説明および現在の技術的状況 説明をはじめとして, コンピュテーショナルデザインにおいて前提となるコンピュータの特質,計算 と演算の語句的な定義の違いについての吟味を試みている.またコンピューテーショナル・デザインの 基本的修辞となる用語解説をおこない,概念的および技術的な意味での人間の創造性との関わりについ て事例をもちいて説明している.以上のことを検証した上で,《演算的設計手法》を設計行為の設定と 運用 = 演算として定義し,制作研究への導入としている.

第 3 章および続く第 4 章では,博士制作研究に関わる作品の具体的なプロセス解説として,空間充填 形と双対グラフを用いた造形物設計の研究について説明している.前章までが,本研究で取り扱う方法 論の概念整理として機能しているのに対して,この第 3 章より,博士作品の設計・制作に直接関係した 研究を展開している.具体的には,オクテットトラス空間充填形をベースに,その双対関係にあるグラ フを軸線とした構造体の開発研究を行っている.オクテットトラスは全ての面が三角形によって構成さ れているため,形状歪みを与えても,常に平面のみで構成される非常に安定性の高い空間充填形である. その特質を活かし,より設計者にとって自由度の高い設計手法をプログラミングとデジタル加工技術を 介して実現している.構築物制作のための材料変数として面材と線材,2つの展開に分けて作品制作を 行った.博士制作作品では,研究において展開された方法論の一つの帰結点として,角材による構築物 制作を行った.

本研究において,演算的な思考に裏付けされた形態発見法および,高度な情報技術に根ざした設計手 法を開発した.成果物として制作される一連の作品は,システムベースの手法がもたらす新たな価値の 発見や作品的意図と技術的に裏打ちされた合目的性の帰着点を提示し,情報技術の時代における物質的 表現の新たな可能性を示すことを目指した.
角材の軸を連続させる

角材の軸を連続させる

砂山 太一
略歴
2003年3月 多摩美術大学彫刻学科卒業
2008年12月 École Spéciale d'Architecture修了